本記事は、2022年11月5日から実施された「FILM RED出張版SBS≪副音声上映≫」を書き起こしたものです。映画館でメモ帳を見ずに殴り書きしたものをテキスト化しているので、正確でない箇所もあります。
この副音声は「HELLO!MOVIE」というアプリで配信されていましたが、WJ2022年51号(11月21日発売)で尾田先生が「BD特典は拒否!!笑」と宣言したとおりUHD/BDには収録されず、2023年7月17日ごろにはアプリ内での配信も終了してしまいました。
二度と聴くことができなくなったので仕方なく放流しますが、実際の音声による尾田先生と谷口監督の掛け合いの魅力を削いだものとなっているので、副音声収録版BDがリリースされたり、公式からYouTubeなどに恒常的にアップされたらこの記事は削除します。
O:尾田栄一郎
T:谷口悟朗
・連絡手段
O:喧嘩になるからアニメ監督と直の連絡手段は持たない
進行:ちょっとギスギスしてる……
O:ギスギスしないためにですよ。今日はLINE交換して帰ります
・ウタの歌
O:ウタは有無を言わさず歌姫と思われるようにした。アイドルではない
T:映画館の音響設備を考えてライブシーンは低音を意識した
O:歌のシーンは上がってきたものにケチつけたいのに(映像が)上がってこない
T:元々は新時代ではなく、脚本の黒岩くんは「新世界」としていた。尾田さんが「新時代」として、そこから「大海賊時代」と対比になるように
・ウタの演技
O:Wキャストは絶対やりたかった。Adoが全ての曲を七色の声で歌ってくれたが、名塚佳織も役者として七色の声でAdoのウタに合わせてくれた
O:他のVTuberと並んだときに合わせるよう、ウタ日記ではあえて高めに演じてもらっていたが、映画本編より先にそっちが出たので世間では「ウタ・Adoに合ってない」と言われて悔しかった
・楽曲提供
T:ワンピースファンのアーティストが多いので「ワンピース」でバチッとスイッチが入ってくれる。「尾田先生が待っている」とも
O:実際に待ってるしね(笑)
進行:グリーンアップルはファンを公言してますね
O:「ウタカタララバイ」のデモを初めて聞いたとき、「歌えんの? 先輩アーティストからの挑戦状?」と思ってたら、歌えんのかい!
O:Adoと7組のアーティストの競い合いが生まれる。7組の提供者同士でも競い合いが。そのみんながウタを歌姫にしてくれた
O:設定的にはそれを(ウタ)一人でやってるので本当に天才
・フィガーランド家について
O:説明したくない(笑)
O:名前だけでいいでしょ。原作をお楽しみに
(担当からバツが出る)
・ウタウタの実
T:企画にまず「歌」があった。じゃあ能力が歌に関わってないと駄目
T:黒岩くんが「シャンクスとルフィは会えないから世界を分けましょう」
O:歌だと!? 正気か!?
O:僕よりも経験があってどうなるか分かってるはずなのに本気でやるの?
・ウタのチキンレースでのジュース戦法は第1話のシャンクスのジュースと同じ?
T:それ以外にある?
・負け惜しみィ
T:印象に残るよう言わせた。話題になるとは考えてなかった
・ウタのデザイン
O:片目を隠すことは谷口監督のこだわり。ラフを無数に描いてるうちの片目を隠したものが気に入った
T:ヘッドホンなど未来っぽいデザイン
O:隠すなら左目を隠してほしいと言われた
T:カミシモでウタは左側に配置されることが多かったから
O:髪型は色々研究した。みんなは動物の耳が好きだよな、とか
O:髪の毛が動くことで2種類にできた。うさぎの耳とたれ耳うさぎ
O:モチーフは「未来」と「天使」
O:ラストのゴードンの「天使の歌声だ」で感動するシーンになると思ったから、そこで映えるように
T:左手の麦わらマークを見つけて、これは劇中で使わないと! とびっくりした
・初期にルフィが音楽家を欲しがっていたのはウタの影響?
O:そうなんですよ〜〜〜!!
担当:ワハハハ
O:なんで笑うんですか(笑)
O:みんなで作っていきましょうよ
・ウタは何故海賊嫌いの設定に?
T:ルフィと相反する、真逆で対比させる
T:何故嫌いになったのか? と考えてあの過去になった
・「逆光」
T:観客のclapはデモにあったものをAdoが気に入って取り入れた
・虚構のヒーロー・ウタに対して現実のヒーロー・コビーは意識した?
T:ゲストキャラはプロデューサーに誰を出したいか聞いたらボン・クレーにこだわりがあり「ボンちゃんを中心に!」と。ボンちゃんは大きすぎて説明が必要になるので申し訳ないが……
O:みんな(スタッフ)のやりたいことを最優先にして、その上で自分がまとめて「ワンピース」にする。ゲストを見たとき地味だなと思った
T:コビーとヘルメッポは出したかった。REDから入ったファンが原作を読んだとき、最初の方に出てくるから映画を思い出して「今(W7やレヴェリー)こうなってんの!?」と
・ゴードンさん、誤解しててごめんなさい!
O:REDの企画が2019年からスタートしたから忘れてる……
O:(デザインを)依頼した人を驚かせたいから意外性はいつも意識している
T:没になったけどゴードンが黒幕のプロットもあった
T:決定稿までどうなるか分からない。どう転んでも覚えてもらえるように(インパクトのあるデザインにした)
・ウタにとってゴードンとは?
T:父には「なり得ない」。育ててくれた恩は受け止めている。優しい親戚のおじさん
O:ん!?
O:もう一人のお父さんなんだろうな。監督は冷たかった
O:格好いいキャラを演じる津田健次郎を面白がってゴードンに当てた(そしたらいいキャラになった)
・サニーくん、ブルーノ、ベポ
O:谷口監督がミニブルーノを出したがった
T:サニーくんについて説明をせずに「(デザインが)欲しい!」と
T:出来上がってる音楽や画を説明すると長すぎて尾田先生が途中で聞かなくなるから、省略して信じてもらう方がいい
O:出来上がったらサニーくんが必要だった意味も分かった
・第1055話のシルエットは?
O:ウタですよ
O:原作は原作で完結しないと、ずっと読んでる人が混乱するから、本来はアニメのキャラは出しちゃいけない
O:「そんなに恐いか?」は台頭する若者、ルフィ、モモの助、日和を思い出すシーン。シャンクスの頭の中ならそこにウタがいないと鬼すぎない?
O:REDは原作の中には存在する
O:せめてシルエットでも描きたかった。(シルエットなので、REDを観てなくて)分からなかったら読み飛ばしてね
・REDは正史?
T:正史は尾田先生が決めること
T:原作にあってもおかしくない。最初から嘘として作ったら嘘になる、という創作姿勢
(谷口監督へのインタビューではパラレルではなく時系列を決めているとも)
・過去編までが正史? REDの事件は原作でも起きた?
T:マルチバースではない。アニオリにするとルフィの性格も一から考えることになる。それは原作にも失礼
T:原作でどうか決めるのはアニメスタッフではない。権利は尾田先生
O:原作にもあるけど(前述のシルエットのように)原作には引っ張ってこれない
・ウタの生死について
O:指摘されて気付いたけど、年表(40億巻)には「死にゆく」としか書いてない。「死んだ」とは言ってない
・「ウタ サバイブド」という文字があったけど(「永遠に生き続ける」ということ?)
O:スタッフのいたずら?
T:心の中に、という意味かも。実際に生きているかも。それを決めるのはあなたたち
・「ウタカタララバイ」
ウタの歌には仮タイトルがあった。「ウタカタララバイ」の仮タイトルは「みんな私の仲間」
T:マイケル・ジャクソンのスリラーのMVをイメージ
・怒りは踵、リズムはつま先は意識した?
O:気付いてた。印象的だった
T:そうだよ
・ギャグ
O:キングオブコントでビスケットブラザーズが「笑うことを諦めるな」と言っていて名言だと思った
O:分かんなかったーで投げるのは簡単
T:(意外な反応について)海外での上映などにも立ち合ったが、どれも思ったとおりの場所で思った反応をしてくれた
T:ギャグのつもりでやってないのはルッチ。予想外だった。普段慌てないキャラが取り乱す、という演出のつもり
・帰りたいから一連のシーン
T:演出家は誰でも好き
O:コンテにもキャラの年齢まで書いてあった
T:そこを書いておかないと男だけとかになってしまい立体感が出なくなる
・ヨルエカとロミー
O:(ロミーの名前に元ネタは?)覚えてない
O:依頼されて描くキャラと、必要になりそうなので先手を打って描くキャラがいる。これは後者。使ってくれと思った
T:ヨルエカのデザインはスタッフにチャレンジさせた。けど貧乏の記号の入れ方がそうじゃない、とリライトばかり
T:プロデューサーが「尾田先生が描いてきて“しまった”」
T:このデザインなら声作りもちゃんとしないといけない
T:梶くんはワンピースファンでようやく出られたと思ったらモブ……
T:モブにも格のある声優を使う、それを笑って許してくれるのが梶くんだと思って選んだ
O:モブなんかいない! みんな人生の主人公!(笑)
・トットムジカについて
T:世界中の負の感情の集合体
O:「魔王」はワンピースに出てきてもいい概念ではあるけど、アニメはアニメとして割り切っている
O:「魔王」は原作に存在するけど描いてない
O:ワンピースの「不思議」は悪魔の実だけ。そこにトットムジカはいる
T:そこまで言って大丈夫!?(設定を知ってそう)
O:最後まで話さないから。謎は謎のまま。これについては描かない気がする
・ウタは夢の果てを知っている?
O:ごめんなさい! 40億巻はミス、修正前のものを出してしまった
(現在は当該部分を修正したウタ年表が公開済み)
O:読者はエース・サボ・ルフィが好きで大切。ウタの存在はそれを壊しかねない、反感を買うかもしれない。ウタの立ち位置は二人とは違う
O:ルフィ・ガープ期→ルフィ・シャンクス・ウタ期→ルフィ・シャンクス期→ルフィ・サボ・エース期の四つの時代に分かれる
O:三つ目、シャンクス時代に夢の果てが決まる
O:ガープに海軍に入れと言われたけど(自分が目指すべきは)海兵ではない、シャンクスに会って海賊になりたいと思った
O:アニメ連動エピソード(アニメ1029・1030話)は全てチェックしている、正しい(つまり泳げない設定なども含め1029・1030話は全て正史と確定でよさそう)
・トットムジカの倒し方
O:上手い!
T:見ようによってはワンピースっぽくない? と不安
O:(シャンクスとルフィ)これしかない! よくやってくれた!
・ルフィがウタに言った「新時代」は夢の果てのこと?
O:自分が書いた台詞
O:ウタに理解できるような言い方にした。ウタは海賊を知らないので他の言葉では伝わらなかった
O:新時代というワードで二人は結ばれている。総括している
・ルフィが技名を叫ばないのは?
T:気付きましたか。ルフィがウタのことを考えると技名を叫ぶ心理にならないと思った
T:その分他のキャラはできる限り叫ばせた
O:気付きませんでした
・ワンピースの正体
T:24年前に仲間になる順番や離脱して……ということもワンピースの中身も全て聞いた。すごいのは24年間そのとおりに進んでいること。聞いてたよりも長い時間かかったけど(笑)
O:言ったこと覚えてない……
O:お酒は飲まないし誰彼かまわず喋らない。初めて会ったアニメ監督なので話した
T:こっちも誰にも言えないまま抱え込んで……早く最終回になってくれ(笑)
・漫画とアニメ
O:谷口監督に「漫画家がアニメ監督になれるか」と聞いた。そのとき無理と言われたが、24年経って今の現場で改めてスキルの積み重ねで追いつけないと分かった。あのとき監督を目指していれば別だったかもしれないが
T:当時22、3歳の漫画家が予算管理のことまで考えてるーというのを覚えている
・原作にも格好いい赤髪海賊団を出してください。ホンゴウさんの虜になりました
O:描きます……よね
O:ホンゴウさんが活躍するかはその場のノリだから分からないけど
O:ただこれから色んな海賊団を出していくからな〜
T:緑川さんが「台詞が少ない……」と。モンスターよりはいいでしょ(笑)。重鎮の島田敏さんがあれなんだから
・ルフィの悪者マーク(麦わら+赤髪マーク)
O:ウタの知っている海賊のイメージだからああなった。麦わらの一味のマークも知らないし
O:(勿論スタッフの作ったものだけど)映画のデザインというよりは「ウタのセンス」の衣装
・キャラデザ
O:デザインは僕発信じゃない。99%描き直すけど、まずは案を見る。それでスタッフのやりたいことが分かる
O:SWで黒、Zで赤、GOLDで青と白とやってきたので今回はそれと被らないように。スタンピードは自由だった、色を変えるだけ
O:アニメで動かさないといけないから複雑なデザインにしないよう
T:あんたが言うの!?
O:サトマサ(佐藤雅将)は(衣装の装飾を)取ってと言っても取らない人なので、途中で脱ごう、そうしないとバトルできないので、と
・シャンクスはカリファをCP-0だと知っていた?
O:(回答を求められて)僕!?
T:シャンクスの知識レベルをルフィと同じにするために必要だった(会話シーンが)。関係は言いませーん
O:これについては文句がある。カリファとブルーノは元々CP-0に入ってなかった。もっというとヘルメッポもSWORDじゃなかった
O:映画としてやりたいことは分かるから原作の方を変えた。本物のCP-0を出しても(設定的には正しくても)説明がないと観客が混乱する
T:一応明確にはCP-0とは言ってない……
O:今更言われましても……
O:丁度ワノ国編でCP-0を出して考えて、仮面を付けているか付けてないかで段階的に強さが違うという設定があった
・尾田先生はウタちゃんを愛していますか?
O:みんなにとって娘のように育ったキャラ
O:キャラの名前で僕が関わっていたら“名付け親”になる
O:脚本で決まった名前にボツを出した。「絶対“ウタ”だ」と思ってたのに向こうから(そのキャラに「ウタ」という名前が)出てこない
T:「ウタ」はシンプルすぎる。当時ワノ国編だったこともおり、そんなにシンプルでもいいの? と。「エレジア」の響きからヨーロッパ風の名前にしていた。「ウタでよくない?」と言ってもらえれば……
O:(スタッフを)誘導したかった
T:今思うとそれくらいシンプルな名前じゃないとこんなに多くの人に響かなかった
O:ASLをウタが食わないよう。スタッフが優遇してしまうが、今回は僕もウタを優遇した
T:今のファンというよりも、新規を取り込んだり、昔のファンを呼び戻す
・ギア5
O:「最初」(2019年?)にはまだ存在していない。REDを作っている間に出てきた
T:編集部からは「いつ登場するか分からないから、出ない想定で」と言われた。そしたら出ちゃった
O:原作で出す時期までは計算できないから
O:原作で出てしまったので「なんで映画に出ないの?」と思われてしまう
T:(ギア5登場週に)スタジオに入ったらみんなザワザワしてる。こっちから原作側に出そうと言うとややこしいので、準備だけしておこう
O:谷口監督はスタッフに配慮してしまう。なので我儘な人が一人必要。「尾田さんが出すって言うから仕方ない」と思わせる
・シャンクスの出生地
O:シャンクスの人生はガチガチに決まってる方のキャラ。でもまだ全ては埋まってなくて、例えば1日とか1時間ごとのスケジュールには空きがある。どこかに挟んで違和感はないか?
O:ルフィにも自分の知らない部分はある
O:担当によく言うのが、「(そのキャラのことが)分かった」。(後付けするというより)シャンクスのことをより知っていく
T:尾田先生からオーダーをもらって、そのシーンを入れるならラストしかない。そのときにどのキャラを置いていいか相談した
O:二十歳の男が子育てって? その説得力には「あのシーン」を思い出すしかない
・ウタの「あんたも寂しかったんだね」
T:トットムジカから散り散りになった一つ一つの声を聞いた。溜め込んでいた負の感情の中には「寂しい」と言う声が。(ウタが)自分でも自分を見つけた
T:ワンピースの台詞じゃないかもしれない
O:僕からは出ない。この映画の、ウタというキャラの核心になっている。この台詞でウタは天使になった。人柱。この世界の負を背負った
・「世界のつづき」
O:谷口監督が「泣いちゃうかも」
O:天使のシーンにベスト
O:担当タカノの音楽知識を信じる。今に合う感覚を持っている
・「風のゆくえ」
T:最後にこれを聞いて映画館を出る
T:2パターンあって、少年漫画っぽい曲と、情感を受け止めていくもの
O:後者でよかった
・エンドロール、サブキャラ祭りは尾田先生の案?
O:映画スタッフのサービス
・エンディング
O:ウタの声を世界中の人に変えていく案があった。その案を取り下げるほどすごい曲
T:合唱のコンセプトだったけど、Adoに負けない声を乗っけられなかった。麦わらの一味(声優)なんかは個性が強いから使えないし
O:(Adoと張り合うとかじゃなく、作中世界の人なので)素人の下手な声でもいいと思ってた。でもAdoの声をずっと聴かせなきゃ駄目だと思った
・「海賊王におれはなる」、アニメでは次回予告で言ってきたがFILMシリーズでは初
T:ルフィのウタへのアンサー
T:これでいつものアニメに戻りますよ、という意味も
O:ルフィとウタのエピソード0として正しい台詞
は