本記事は、『暗号学園のいろは』の魅力を伝えるために書かれたものです。
起こったイベントや人間関係、細かな台詞を拾っていくことで、その面白さを解説する狙いがあります。
これを読んで少しでも『暗号学園のいろは』の面白さを分かってもらえたなら、本誌でアンケートを出したり、単行本を買っていただけたら嬉しいです。
https://ukaritchu.hatenablog.com/entry/2023/10/03/190726
- 第八号「踊る戦争に見る戦争」
- 第九号「戦争は遠くにありて思うもの」
- 第十号「昨日の戦争は今日も戦争」
- 第十一号「泣く子と暗号には勝てぬ」
- 第十二号「堪忍は無事長久の基、怒りは暗号と思え」
- 第十三号「笑中に解答あり」
- 第十四号「へぼ将棋王より飛車を暗号化」
- 第十五号「桂の暗号歩の解読」
- 第十六号「王手飛車解き」
- キャラクター設定資料集「東洲斎京楽」
- 縁ちゃんといろいろ!
- イースターエッグ
- カバー下
- 2巻の出来事・バトル
第八号「踊る戦争に見る戦争」
阿波踊りの唄「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」から。「戦争」を「阿呆」としているのか。(1巻3話に続き)ダンスがテーマ。
2P4コマ目「思ったより早い再会だし 思ったより速い解読だな」
「早い」は時間に、「速い」は動作に対して使われる。
5コマ目「2人のスピードクイーン」
カステット・カルテットでチームを組んだ東洲斎と縁沙のこと。
6コマ目「妬けるぜ 凍だけど」
妬く(嫉妬する)を焼くと読んで、凍えるのに焼ける。
3P4コマ目「とてもあざやかだな」
いろはの言われたい褒め言葉。
4P1コマ目「折角だし… 確度の高い…」
前ページの「折角だし」はいろはの解読が速かったから、「確度の高い」は数学パズルに対して使われているが、ここでは「確度の高い解読」をすることを「折角」だと言っている。それと、「折『角』」と「『確』度」で掛かっている。
5P5コマ目「あ ボクが最初じゃないな これ…」
1巻3P13コマ目同様、凍の表情を読む。
7P1コマ目「今ってスマホこんな感じなんだね」
作中の年代が不明であることをメタ的に指摘している?
8P1コマ目「『踊る人形』」
1巻3話の扉絵で暗号が使われた。
10P3コマ目「三年生にならないと許されないようなカリキュラム」
暗号学園の三年生は、大国の絡む内戦に関する暗号を解くらしい。
11P2コマ目「この戦歴では口出しがしにくいわ」
いろはを戦争屋・凍に加担させたくないが、それが利己的な理由だとは思われたくない。令嬢であり派閥を率いているから、体面が必要。
4コマ目「後方博士ヅラ」
2010年代の地下アイドルの「現場」で生まれた「後方彼氏ヅラ」という言葉から。
14P2コマ目「ああいう映画」
イギリス領インドにおける独立運動・革命を描いた映画なので。
3コマ目「怒られるとしたら別の理由」
大人の事情で。
ワンポイントレッスン
『RRR』は日本では2022年10月21日公開(掲載はWJ2023年8号/1月23日発売)。本記事を投稿した現在も少数の劇場で上映中であり、リバイバル上映がされる可能性もあるので、この情報から年代を推定するのは不可能。
17P4コマ目「シャッポを脱ぐ」
シャッポはフランス語で「帽子」、なので脱帽。「舌を巻く」「尻尾を巻く」とも掛かっている?
5コマ目
1巻4話18P1コマ目で「使用者を暗号兵器に促成する」と語られている。“レベリング”とは……?
第九号「戦争は遠くにありて思うもの」
室生犀星の詩「小景異情」の一節「ふるさとは遠きにありて思ふもの」から。
「故郷は遠くから思うものであり、たとえ東京で乞食になったとしても帰るところではない」という意味だが、これを詠んだころの犀星は、東京で文筆だけでは生活ができず、「帰る場所でない」金沢に住んでいた。本編の展開に当てはめると、「踊り子が戦地から日常に帰りたがっている」ということか。
3P6コマ目「『なんとなく』は『難なく』に通じるぜ」
「なんとなく」は「何とはなしに」、「何気なく」といった意味なので、「難なく」ではない。無関係だが縁起がいいのでゲンを担ぐというのはよくあること。
4P3コマ目「ズルっこの眼鏡に頼るのは」
8話15P4コマ目の台詞から、いろはが眼鏡兵器の返却を申し出た(そして拒否された)ことが伺える。
6・7P「解凍編」
1巻3話21P2コマ目の発言を撤回して。ということで、2話以来3度目の眼鏡兵器を使った解凍編。
9P「手指の動きに主旨がある」
面白い面白くないではない。
ワンポイントレッスン
8話14P1コマ目のいろは(がトレースした踊り子)のナートゥのポーズは、たしかに映画のダンスと異なっている(YouTubeに国内外の映画サイト、VOD、レコード会社などが公式でアップロードしているので確認できる)。
17P3コマ目「おめざ」
「お目覚め」の幼児語。何故幼児語で話しかけたのかは、11話10P6コマ目に。
18Pワンポイントレッスン
同じことを1巻カバー下で行っている。
第十号「昨日の戦争は今日も戦争」
日露戦争を歌った「水師営の会見」という曲の歌詞「昨日の敵は今日の友」から。東洲斎と凍の関係性についてか。
1P目
一枚絵や見開き以外でタチキリまでコマが拡げられるのはこれが初。9話までは内枠を基本としていたが、10話以降はタチキリが使われるようになる。
2P5コマ目「氷漬け」
凍に関わるとそうなるのか、眼鏡兵器を使いすぎるとそうなるのか。
ワンポイントレッスン
ディスペンパックの名称がパキッテに変更されたのは、2019年9月。
6P4コマ目
濃姫の名前が出てくる理由は2巻13話で。
6コマ目「M組へ入るため」
「入る」というのは編入か、それとも教室に入室するのか。
11P1コマ目「わけのわからんイチャモンをつけて引き分けに持ち込む」
1巻4話目のこと。他人がそれをされたら笑うけど、自分はやられたくない女、夕方。
12P1コマ目
西尾維新自身、『りぽぐら!』という小説を書いている。
ワンポイントレッスン
『幽☆遊☆白書』の領域編を、ここでは『HUNTER×HUNTER』の念能力に重ねているが、同人誌「ヨシリンでポン!」では「アレ(作品名は伏せているが『ジョジョの奇妙な冒険』スタンド編)」の「パロディ」としている。領域編本編は、書き文字などが特に『ジョジョ』を模している。
3コマ目「賭けるのは魂じゃなくてプライドだけど」
そんな『ジョジョの奇妙な冒険』第3部、ダニエル・J・ダービー戦及びテレンス・T・ダービー戦から。西尾維新はジョジョパロで有名である。
冒頭で触れたとおり、本作はアンチバトル漫画でありながらジャンプ漫画を志向している。『幽☆遊☆白書』の領域編は作者本人が「笑い飛ばして欲しかった」と語るようパロディであり、暗黒武術会編もいわゆるジャンプ漫画のトーナメント展開をパロディしたものであった。『HUNTER×HUNTER』では序盤が特に「アンチジャンプ」のきらいが強く、単純に勝つだけで終わらないサバイバルや、負け残りの逆トーナメント、主人公が脇役になる章と、王道を外しながらも少年漫画であることを目指した。
ダービー兄弟戦はいずれも「ポーカー」と「テレビゲーム」という非バトルの戦いである。
決してバトル展開に移行しない本作において、この二作のタイトルが引用されるのは示唆的である。
16P1コマ目「ブラバー」
イタリア語「ブラボー」の女性形単数形の語尾変化。つまり、一人の女性に対して使う場合。
第十一号「泣く子と暗号には勝てぬ」
「泣く子と地頭には勝てぬ」ということわざから。
1P目
夕方の自己紹介Xワード。名前縛り。『るろうに剣心』、『新世紀エヴァンゲリオン』、『美少女戦士セーラームーン』とアニメの趣味が90年代後半。筆跡が鋭い。
5P1コマ目
夕方の質問は全ていろはの自己紹介Xワードのヨコのカギ。
6・7、8・9P目
間のページを飛ばして6・9ページだけでも見開きとして成立している。
独断で気になるものをピックアップする。
・父親は風刺漫画家
・入学理由は父の強制
・年齢は不明だが兄弟と姉妹が一人ずついる
・幼少期に虐待された経験がある
・初恋の相手はサークルの先輩(中学校以前)
・中学時代はチア部
・告白経験あり
・失恋経験あり
・ラブレターをもらったこともある
・好きなタイプは枢斬暗屯子(『激!!極虎一家』)
・結婚するなら肉枝教官
・神は信じない
・声変わりはまだ
・自分のことをクラスで3番目に可愛いと思っている
・人の死に9回立ち会ったことがある
・暴力や人数差を嫌うのは、渦中にいたから
また、夕方の質問についてはのちに回収される。
・綿菓子のヘアスタイル(4巻)
・濃姫にこだわっている(2巻13話)
12P
自明だが、夕方の持つカードと照らし合わせて一応穴埋めしておくと(こういうことをするのがこの記事の目的だし)、「なぜ せ[ん]そうはな[く]な[ら]ないの? [にん]げ[ん]はいつまで [ころし]あうの?(何故戦争はなくならないの? 人間はいつまで殺し合うの?)」。
13P5コマ目「あ…あうう ゆ…ゆうが…」
「た」「さ」「ん」が使えないので言い淀む。意識が飛んでなおルールを守ろうとしている。
14P1コマ目「引き分けってことだね。」
1巻4話14P1コマ目、いろはの台詞を引用して。無論、夕方は(そしていろはも)引き分けだとは微塵も思っていない。
4コマ目「なかなか明るいね」
いろはの言われたい褒め言葉「とてもあざやか」の失言半減質疑応答での言い換え。
1話で東洲斎、2・8話で凍、4話で綿菓子に言われた「とてもあざやか」だが、夕方には言われなかった。「わけのわからんイチャモン」すら付けられない、完全敗北だから。
〜リポグラム編〜
こちらも穴埋めしておくと、「みな[さ]んは訊きたい[こ]とは訊け[る]う[ち]に訊いておきまし[ょ]う出ないと任意の半減で[も] [こ]の[ザ]マです[ね] [さ]あ! [こ]れであなた[も]【言論弾圧】!」
「このザマですよ」の方が文として自然だが、なるべく多くの文字を使うならで「ね」とした(「こ」と「さ」が3回、「も」が2回使われているので、被りなしではないが)。「わ」や「ぞ」でも通じます。
第十二号「堪忍は無事長久の基、怒りは暗号と思え」
「東照宮御遺訓」の「堪忍は無事長久の基、いかりは敵と思え」から。怒りによって周囲が見えなくなり、見えるはずのものが暗号になってしまうというお話。
4P2コマ目「おうどん」
2話のリベンジ。目当てのものを食べることができた。
5P1コマ目「バトルはお前が雑魚だから負ける かつてない程弱かった どうせ大して暗号やる気ないよね?」
初めて解答が明かされなかった暗号。
ばとるは[お]
まえがざ[こ]
だからまけ
るか[つて]な
いほどよわ
かつたどう
せたいして
あ ん ご
うや[る]きな
い よ ね
[?]
5文字で区切って五十音に当てはめて、五十音表と一致した文字だけを拾っていくと「怒ってる?」となる。いろはを拷問したことについて、いろはが怒っているか確認している……のだが、(真意でないとはいえ)わざわざ煽る意味もないのでいい性格。なお、夕方はこのQ.17をもって「いろはに謝った」と自認している。「同じクラスでギスギスしたくないし」。自力で解かなかった読者には死体蹴りしているようにしか見えないが……。
7P5コマ目「それと同じで」
1巻1話51P1コマ目で解説したとおり、暗号バトルに負けた東洲斎だったが、本気で「下女にな」ったわけではない。あえてミスリードを誘う言い方をしたのは夕方だが、言葉を遮ったのはいろは。
8P3コマ目「NO…」
言葉を失った、のではなく、苗字。
時系列順に並べると、5〜8P→1〜3P→9P〜となる。
9P1コマ目
濃姫家雪 3月14日生まれ
NO、YES、NO。姫(貴族階級)で家柄もいい。それと、お嬢様の語尾「ですの」、でスノー。誕生日は雪だけにホワイトデー。
2コマ目
夕方の言葉をいろはが遮り、濃姫の台詞を羊狼川が遮ることで、理由は説明されず。が、遮られなかったとしてもこの二人が初手でストレートに説明してくれるかというと……。
10・11P目
東洲斎派以外の派閥が明かされる。
母倉、膾、羊狼川は濃姫派。
縁沙、朧、海燕はいろはとの同盟(1巻7話)。
無所属・真蟲犇、個人主義・小芝井、独立独歩・要塞村。要するに全員同じ。
11P2コマ目「女子校的」
要塞村はこれを「女子校の派閥」と捉えているが、実際には、本作には政治劇の側面もある。これまでにも東洲斎が体面を気にするなど、その要素はあった。
15P2コマ目
コールとルールで掛かっている。またポーカーの「コール」から、髪留めをチップに見立てている。
16P4コマ目「いろいろ」
17P2コマ目「縁ちゃん」
カステット・カルテット以降、あだ名で呼び合うほど仲を深めていたよう。
17Pワンポイントレッスン
GIGAに載ることはなかったが、2巻で描き下ろされた。
18P1コマ目「勝っても負けても引き分けても! いろは坂いろははただじゃ済まない──」
これまで勝利条件や敗北条件を誤魔化したり、そもそもバトルではなく拷問を受けたりしたが、今回の暗号バトルでは、勝つことも負けることも、引き分けることさえも許されないという条件が課せられた。
3コマ目「革命と8切り」
どちらもトランプゲーム「大富豪」のローカルルール。「ハウスルール」は店のローカルルールのことで、貴族のお家が決めるルールではない。
〜リドルストーリー編〜
「リドル」は物語の形式の一つで、「ミステリ」とは異なりその謎が作中で解決されないもの。ここではQ.17に解答編がなかったことから。
東洲斎が食べているのは12話で夕方が食べているのと同じ、⑦サラダ(食券機の番号は1巻2話)。
第十三号「笑中に解答あり」
「旧唐書」李義府伝の「笑中に刀あり」から。濃姫を笑わせるいろはは、勝ちでも負けでも引き分けでもない“解答”を得る。
1P目
濃姫の自己紹介Xワード。全体的に貴族っぽい答え。縁沙や夕方のようにテーマを決め打ちしないまま統一性がある。
ハインラインの代表作といえば『月は無慈悲な夜の女王』。当主で女王だけに。パンはマリー・アントワネットから。それと、平仮名が丸文字。
3P1コマ目
前話に引き続き、髪留めなしで髪は下ろしたまま。
4P7コマ目
一人だけ顔に出してしまう羊狼川。
10P1コマ目「この暗号バトル 東洲斎享楽が預かるわ」
前話18P1コマ目において、勝ちも負けも引き分けも許されないことが語られたとおり、そのどれでもない決着にするしかなかった。はずだが……。
11P2コマ目「尊厳破壊」
「尊厳破壊」「尊厳陵辱」は元はアダルトゲームに使われる言葉だったが、2020年、『ONE PIECE』第969話、第970話をきっかけに広く浸透した。
5コマ目
軽々しく友達だなんて呼ばれて怒り心頭の東洲斎、かと思いきや友達だと思われたことを喜んでいただけ。1巻1話のやりとりも、本気だったことが窺える。
13P5コマ目
幼き日の濃姫はメカクレ。なので、失明した時期がいつなのかは(そして“眩しい暗号”が何なのかも)現時点では不明。
16P「当家はあなたに1億モルグ出資しますの」
1巻2話で解説したとおり、2021年を例にした概算では500億Mは5兆9551億円(を下回らない)。なので、1億Mは120億円。
19P
これまでA組生徒としか関わりのなかった凍だが、裏では教師と密会していた。
5コマ目「兵棋演習」
兵棋演習は、実際の戦争・作戦を想定して机上で戦況を再現するもの。地図を広げて凸型の駒をレーキ(参棒)で動かすやつ。
第十四号「へぼ将棋王より飛車を暗号化」
将棋の格言(川柳?)「へぼ将棋 王より飛車を 可愛がり」より。
2P1コマ目「今回はまずリーグ分けをおこなう」
学級兵長選抜試験第一回「カステット・カルテット」の二人組は解散となる。ということで、選抜試験全体をあのチームで行うわけではない。カステット・カルテットの勝者・いろはチームに何の特典もないことから、あれは勝負というよりも親睦を深めるためであったり、対外的なポーズを見せる場であったと考えられる(それにより、いろはは縁沙、朧、海燕を仲間に引き入れることができた)。
4P1コマ目「伏線の回収も速い!」
1巻6話15P5コマ目の口癖。
5P2コマ目「きみ達に協力されると強力なんでね」
協力と強力が掛かっている、のはいいとして、同盟とはいえいろはに完全には与しない。仲間になっても友達にはなってない、という距離感。
6P1コマ目「解答編!!(常温)!!」
失言半減質疑応答、初の出題側を経て、久しぶりの解凍編。眼鏡兵器なしなので、時間はかかるけど常温解凍。
7P1コマ目「将棋盤じゃなくって!」
サブタイトルが将棋に関するものなのもミスリード。
14P1コマ目
1巻7話で明かされた小芝井、真蟲犇、雁音と、目々蓮が眼鏡兵器を光らせる。が、雁音は眼鏡を外しているように見える。
15P「マダミス」
マーダーミステリー。リアル脱出ゲームの隆盛と共に台頭したパーティゲームで、リアル脱出ゲームのように施設で行う体験型と、家やボードゲーム専門店などで遊べるパッケージ型がある。後者はゲームデザイナーの作品のほか、ラノベ作家・河野裕がシナリオを書き下ろしたり、WJ2023年16号には「キミと青いヨルの」というマーダーミステリーと導入となる読切漫画が掲載された。
17P6コマ目
夕方のカードを見せつける小芝井。いろはの「知ってる子」は夕方と朧の二択だった。
18P1コマ目
朧そぼろのキャラクターカード。「非公開情報」は「暗号学園殺人事件」のための設定だが、それ以外のほとんどは正しい情報に見える。
眼鏡兵器「色眼鏡」は1巻7話で使用しており、2巻11話でいろはは(根拠不明だが)朧のことを「元囚人」と推測している。が、「虚実皮膜入り混じる」と言われるとおり、その中にはフェイクの設定も含まれている。
このキャラクターカードによって、全てのクラスメイトが各々一人ずつの(知られたくない、いくらかは事実の織り交ぜられた)パーソナルデータを覗き見することとなる。
第十五号「桂の暗号歩の解読」
将棋の格言「桂の高跳び歩の餌食」より。情報が飛び交う中で、一歩ずつ解読していく。
1P2コマ目
笑う朧。12話14P2コマ目では「おしりのり」で笑っていた。
2・3P目
Dリーグの自己紹介Xワード。
小芝井は「逃げる」「演じる」の印象。
雁音は理科・自然っぽい。
目々蓮は……危険思想。
真蟲犇は名前が収まらないのでトリッキーに。タテのカギが「あなたの名前は?」なので(広義の「フルネーム」を問うているのを狭義の「下の名前」と解釈して)、必然的に苗字の方を横書きに。
そして、四人は本来のキャラデザではない。
小芝井は髪を結んで夕方風のポニーテール。
雁音は眼鏡を外して(コンタクトを入れて。コンタクトの方が眼鏡兵器?)→次ページで丁寧にツインテールを作ってもらい牡丹山に。
目々蓮は包帯を巻いて沼田場に。
真蟲犇はバンダナを外し学生帽を被り、上着を開けて羊狼川に。
5P1コマ目「牡丹ちゃん」
牡丹山春霧のこと。仲良し。
4コマ目「おたまちゃん」
真蟲犇のこと。一匹狼同士仲がいい?
6P3コマ目
☆1・☆1・☆3・☆0を独占する目々蓮。これにより☆5を押しつけると同時に、☆2を1枚余らせてトークン1枚のプレイヤーを3人作る非道い一手。1人とは2枚差、2人とは3枚差のアドバンテージを得られる。
7P3コマ目「強火担」
アイドル用語。「推し」と呼ばれる好きなアイドルを「担当する」と表現し、「(名前)担」を名乗る。それに、愛情が強火(大きい)であることから「強火担」。特定のアイドルのことが好きすぎるので「同担拒否(同じアイドルを『担当』する者を憎む)」となることもある。ここではより没入するアイテムを求めている。
8P6・7コマ目
波と並々ならぬで掛けている。
10P1コマ目
夕方そのものになりきる小芝井……ではないことが、3巻20号2P目で分かる。
11P4コマ目「なんなら一番コスプレしてないのに…」
目々蓮は全身に包帯、真蟲犇は学生帽+前開け、いろははマント、雁音はヘアゴム(+眼鏡マイナス)、小芝井はヘアゴムのみ。
12・13P目
会話の流れを整理すると、以下のとおり。
夕方→牡丹山に質問「勿忘草の話」
羊狼川→夕方に反論「東洲斎派への牽制」
沼田場→夕方に追撃・トークンA「凶器は踏襲図の新兵器」
怪しまれる夕方。
牡丹山・トークンA「スパイは天麩羅もしくは天秤」
牡丹山・トークンB「勿忘草は朧を疑っていた」
羊狼川・☆4トークン「スパイは豚の覆面」
羊狼川・スキル『残飯処理』使用
羊狼川・☆2トークン「犯人の出席番号」
牡丹山→羊狼川に反論「解読を疑う」
夕方・☆4トークン「犯人の左目を傷つけた」
羊狼川がスキルを発動して場に全てのトークンが出揃う。その全ては犯人の特徴について。
牡丹山→夕方・スキル『オデュッセイ・アイ』使用「暗号カードの透視」
夕方→沼田場・スキル『くれなずみ』
使用「牡丹山の『オデュッセイ・アイ』を沼田場に使用」
沼田場・スキル『記憶喪失』発動「『オデュッセイ・アイ』を無効化」
スキルの応酬。牡丹山がトークンを手に入れるはずだったが最終的に無効化される。
沼田場→羊狼川に攻撃・トークンC「スパイは大量のモルグを所有している」
羊狼川→沼田場に反論「濃姫からの借金」
怪しまれる羊狼川。
夕方→沼田場に質問「勿忘草に流した情報」
沼田場→夕方に解答「言えない」
怪しまれる沼田場。
夕方→牡丹山に攻撃「口論しているのを見た」
牡丹山→夕方に反論「大親友だから喧嘩くらいする」
怪しまれる牡丹山。
牡丹山・疑問「暗室に行った理由は?」
牡丹山・疑問「現場は密室だった?」
羊狼川・疑問「合鍵を持っていたのは?」
第十六号「王手飛車解き」
将棋の指し手と、そこから生まれた格言「王手飛車取り」から。苦渋の決断の意味で使われるが、実際の将棋では二択ではなく一択。それが分かっていないと「へぼ将棋王より飛車を可愛がり」となる。
兵棋演習ということで、14〜16話のサブタイトルは全て将棋に掛けたもの。
1・2P目
東洲斎→いろは役
夕方→東洲斎役
濃姫→母倉役
朧→目々蓮役
夕方は本人の前で東洲斎役。同グループのロール。
海燕→小芝井役
縁沙→匿名希望役
要塞村→真蟲犇役
沼田場→要塞村役
牡丹山→縁沙役
沼田場と牡丹山は本人の前で。和気藹々の雰囲気。
綿菓子→海燕役
膾→濃姫役
母倉→膾役
羊狼川→雁音役
匿名希望→綿菓子役
母倉と匿名希望は本人の前で。母倉、膾ともに同グループのロール。緊張した空気、というより凍りついている。
「いたたまれない」という理由らしいが、Dリーグ以外は同卓内で本人の目の前でロールをすることになっている。
5P2コマ目「ネガポジ反転」
暗室にある写真から連想。
5コマ目「いや…」
何が「いや」なのかは11P5コマ目に繋がる。
7P1コマ目「名探偵」
言い訳のできない朧のキャラを逆手に取り、主導権を握ることで発言できるようになる。
3コマ目
ミステリの世界に没入して感動しているミステリマニアの雁音。
4コマ目
☆5トークンを解いて以降敗色濃厚で青ざめる目々蓮。
5コマ目「色めいたのは」
朧の口癖が色にまつわるものなのは、1巻7話1P目から。
10P2コマ目
鉤括弧が取れているので、牡丹山(役)ではなく雁音の発言。名探偵の名推理にテンションが抑えきれない。
11P2コマ目「『推理作家にでもなったらどうだコラ!』」
ミステリ小説やミステリードラマの定型句、「探偵さん、面白い推理だ。作家にでもなったらどうだ」。奇想な推理を披露する探偵に対して、アリバイを持っているから犯人だとばれないようそれを諭す言葉。
3コマ目「羊狼川さんのイメージが悪いな…」
真蟲犇から羊狼川が悪く見えている、ということ。
7コマ目「未読の暗号」
☆0トークンのこと。これを解くと真相に辿り着いてしまうので、朧(役)が読んでないこと偽装した。
12P2コマ目「『決はちゃんと取るよ 東洲斎派だし』
ケツだけに。
13Pワンポイントレッスン
事件の途中どころか終わってから始まるのでストーリーが掴めないが、「暗号の答えが反転する」という以外に真っ当かつギミックを消化してるミステリになっている。
いろは:唯一正解に辿り着けるロールだった。目々蓮との密談がファインプレーで、「暗室に真実がない」情報を手に入れ、「スパイが2人いる」という本来なら不利になる情報をクリティカルに渡せた。
真蟲犇:いろはから見た「犯人」。真相を知り盤面を優位に動かせる役柄だが、それゆえに前提を崩されるとリカバリーが効かなかった。
小芝井・雁音:捜査主任役の小芝井は「一票が確保」と言っているが、盤面が正しく進んだ場合、雁音は必ずいろはを指名することになる。雁音はミステリ好きが災いした、どころか素になって本来敵対すべきいろはを補助してしまった。
目々蓮:「狂人」のロール。優位に立つつもりで☆0カードを渡したのが最大のミス。
ということで、兵棋演習「暗号学園殺人事件」は、
・会話劇と慣れないロールで一度美味しく、
・ゲーム開始前からのストーリーの全貌と各人の勝利条件を把握して二度美味しく、
・ある程度読み進めて朧、小芝井、夕方、真蟲犇、羊狼川、雁音、牡丹山、目々蓮、沼田場の8人を知ってそれぞれの言動が本人のものかロールなのか(他リーグに関してはコスプレとして)、そしてキャラクターカードの情報がどの程度真実なのかで三度美味しい章だった。
14P6コマ目「たゆたん」
傍点が振ってある理由は11話16P。
キャラクター設定資料集「東洲斎京楽」
コートを羽織るのは三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛、姫カットは美人画(というか当時の町人)の髪結いから?
https://otakinen-museum.note.jp/n/n563eeb22d908
縁ちゃんといろいろ!
「ラブハンドル」はカップルが使う英語圏のスラングで、(恋人の)脇腹の贅肉のこと。
「背中じゃなくて脇腹」になっているのは、「腕が長い」から。
イースターエッグ
「紅葉の髪飾り」
8話12・13P目。いろは坂のシーズンが紅葉だから。
「みんな自己主張が強いよ」
いろはのボトルは同シーン。KPAロゴは失言半減質疑応答の裏面。暗号学園殺人事件のシルエットの下に「KOGOE」。
「本にとっての希望でもある」
漫画家として本望だし、本にとっても。
「アスタラビスタ」
スペイン語で「さようなら」。『ターミネーター2』での「地獄で会おうぜ」という翻訳が有名。
カバー下
東洲斎や小芝井のコスプレをしている……のではなく、正解を当てる間違い探し。1巻イースターエッグにて髪飾りと制服について言及されていた。
2巻の出来事・バトル
8・9話……戦場の踊り子
10・11話……いろは対夕方「失言半減質疑応答」
12・13話……いろは対濃姫
14〜16話……学級兵長選抜試験二回戦「兵棋演習 暗号学園殺人事件」
1巻ではいろはの志が描かれたが、2巻冒頭では「大目標」が提示される。小目標は目下のところ「学級兵長になること」だが、それを積み重ねた先に「踊り子の解放」が新たに追加された。つまり、現れた敵を倒す→踊り子を解放する→全ての戦争を停める、という順に戦略を叶えることになる。
1巻では東洲斎、綿菓子と戦ったが、2巻で戦うのは夕方と濃姫。いずれも東洲斎を軸とした配置で、バトルを通していろはを描くとともに、メインキャラとして東洲斎とその周辺を掘り下げている。そして対夕方戦でいろは、初の敗北を喫してしまう。
1巻から続けて「主人公の名前を覚えさせる(第1話の暗号の答えが名前になっている)」「ヒロインを出す(東洲斎、凍)」、「テーマを作る(停戦)」、「都度、小目標を更新する(バトルを用意する)」、「大目標を作る(踊り子)」、「主人公の敗北(夕方戦)」、「軸となるメインストーリーを進める(兵長選抜)」というのは現代のジャンプにおいて必須と言える要素で、2巻のうちにこれらを済ませることができた。
ストーリーとしては、序盤の山場である兵長選抜試験のラスボス、匿名希望が登場して終わる。