今月観た映画(2023年3月)

先月観た映画

 

 

観た映画

機動警察パトレイバー THE MOVIE

アーリーデイズを見たのでようやく観られた。VODがなかったような時代にレンタルDVDでアーリーデイズを何話かだけ見てやめた記憶があるので、およそ10年越しになったっぽい。

写実調のタッチにリッチなレイアウトで、いかにも押井映画らしい画作り。遊馬・後藤隊長・松井刑事をスイッチすることで、情報レベルを変えながら物語は滞りなく進められる。それぞれのパートで質感が異なり、飽きさせない。クライマックスはパトレイバー同士の対決で、OVAとは打って変わって直球のエンタメ映画。

 

機動警察パトレイバー2 THE MOVIE

「東京を戦争状態にする」というシミュレーションのような内容で、全編を通してレイバーが存在していなくても成り立つストーリーになっている。衒学性のなかった前作とは異なり、観念的。ただ、敵の思うままに戦争が始まり、かりそめの平和が幻想でしかなかったことを突きつけられるのは、面白い。

タイトルの「2」は「劇場版2」というより「パトレイバーというシリーズの2」のような意味合いがあり、TVシリーズを見ておけばよかったかな、と思った。

 

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

マルチバースをテーマにしたアクション映画ながら、その実行われているのは家族の話で、スケール感の調整が上手い。「馬鹿馬鹿しいことをすることで攻撃できる」という設定も見事で、矢継ぎ早にとにかく変な絵面が出力される。真面目なバトルをやっているのに笑うしかない。「肛門にディルドを挿入させないために戦う」なんてシチュエーションは後にも先にも観られないだろう。よくある家族愛で全て解決、ということもなく、独自の解答を見せているのもよかった。

 

『女神の継承』

『呪詛』、『哭悲』とともにずっと観たかった映画。フェイクドキュメンタリーのホラーで、厭さの配置が上手い。キャラも起こるイベントも面白く、ずっと楽しい。ホラーにたまにある「最初から用意されていた」系のもので、そこが明かされるのもたまらなく最高。ラストは『哭声』のようなテーマ性を突きつけられる。

 

『ハードコア』

ゲームをプレイしているかのようなハイテンションでノンストップのFPSアクション。適度にフィールドを変えつつ、どれも印象的なので進行が分かりやすい。アクションの組み立ても面白く、FPSならではのそれこそないものの、SF設定と相まって賑やかで楽しい。ラストはありがちではあるものの、FPSほぼワンカット(風)の没入感で、心に響く。音楽の使い方も本当に馬鹿馬鹿しくて最高。

 

ウトヤ島722日』

ノルウェーウトヤ島で起きた連続テロをモチーフに脚色した劇映画。銃を持った単独犯だが、島にいる主人公の視点からは何の情報も得られず、人数もどこにいるのかも不明なまま、逃げまどうことになる。パニック状態の群衆と、主人公に寄り添ったワンカットで非常にスリリング。被害者へのインタビューを元に作られただけあってリアルだが、登場人物は全員架空で、事実に沿ったものではない。完全なフィクションである以上、事件について語るよりもエンタメに重心を置いているはずだが、真面目なポーズのせいで面白さは損なわれている。それならスリラー要素を残しつつ、史実に基づいて作っていればテロへのメッセージ性も持てたわけで、どちらに振っても面白くなるはずだったのに、日和ったせいで強みを持てなかった凡作。

 

パンズ・ラビリンス

日本での上映権が切れるとのことで最終上映。珍しく田舎でも公開があって嬉しい。

童話のようなファンタジー世界に入り込む少女、そしてダークな雰囲気に恐ろしい怪物……まではよくあるが、空想の世界に浸るにしては現実パートが軍に支配された内戦中の国で、物々しすぎる。クリーチャーのデザインは素晴らしく、少女・オフェリアに起こることもワンダーに溢れて幻想的。しかしその妖精の世界も次に何が起きるのかをオフェリアに教えないまま試練を課し、試練が終われば逃げ場のない現実世界に取り残され、どちらも息苦しい。いわゆる「少女が信じたのは空想だったのか、現実だったのか」というものではなく、きちんと妖精の世界が存在するという設定だが、それにしても……

 

CURE

催眠によって殺人を起こさせる男と、それを追う刑事のサスペンス調のホラー。直接的なゴア表現よりも、まとわりつくような不安さが最後まで落ち着かない。

 

キューティーハニー(2004)

『シン・仮面ライダー』の予習。B級実写映画のノリながら、絶妙なバランスで成り立っている。明らかに予算が尽きて引き延ばすパートもあるのに、何故か王道なので見やすい。語られるテーマは『ラブ&ポップ』、『式日』と合わせて庵野作品で使われるモチーフの意味が、これでようやく理解できた気がする。

 

仮面ライダーTHE FIRST

漫画版を下敷きにしたリブートのはずが、韓流ドラマと合体して軸足が定まらない。もう少し考えれば劇中のモチーフにもっと意味を持たせられただろうに勿体ない。大人向けライダーはライダーを怪人にしがちだが、マスクを使うことで逆に怪人をヒーローに描くのは面白い。

 

仮面ライダー THE NEXT

本作は韓流ドラマではなく、何故かJホラーと合体させられている。Jホラーが好きなので好みだろうと思っていたが、ホラー設定と仮面ライダー・ショッカーの設定に結びつきがなく、ホラーの解決も先行作品を研究したとは思えない。大筋はともかくラストには満足したところで、ポストクレジットが全てに泥を塗り台無しにする。

 

『シン・仮面ライダー

アクションはいいが、人間が(酷評された『シン・ゴジラ』とは比べものにならないほど)描けておらず、台詞は全て上滑りしている。そもそも原作に強度があった『ウルトラマン』と違い、『仮面ライダー』という作品が行き当たりばったりで成功したものなので、統一できるテーマがなく、それを無理やり庵野秀明で包もうとした結果、エヴァでやったことの語り直しにしかなってない。ラストバトルの演出意図は分かるものの、アクションとしては冒頭のクモオーグ戦がピークになっていて、ドラマとアクションのクライマックスを合致させられてないのがどうしようもない。ただ、仮面ライダーシリーズ自体かなり自己言及性が高く、初代は何度も擦られ大人向けも何作も作られているが、先行作品とは異なる魅力を出せたのはよかった。「庵野秀明」が足を引っ張るが、「仮面ライダー」の部分は面白かった。

 

『恐怖人形』

巨大化した日本人形がスラッシャーする和製洋ホラー。徹底して馬鹿なのに、何故か真面目にホラーの文法に則っている。あまりに真面目すぎて展開が読めてしまい、後半は退屈。初見のインパクトで出オチにならない構成は偉い。

 

ゼイラム

とにかく生物兵器ゼイラムのデザインが格好よすぎる。エイリアンなのに念仏が流れるのも最高。段階的に明かされる生態も興味深いし、ただでさえ強いのに何度でも襲ってきてしぶといのも嬉しい。SF的なガジェットも好みで、シチュエーションも無理なくピンチを作ってくれる。『ZIPANG』、『ガンヘッド』、『怪談新耳袋』と観てきて、どうやら雨宮慶太のことが大好きだと気付いた。

 

『シャドウ・イン・クラウド

戦闘機の閉鎖空間でグレムリンに襲われるシチュエーションホラー。グレムリンが出てこないときは唯一の女ということで主人公が蔑まれ、また主人公自身も信用できない語り部なので不安が募る。後半はいきなり強い女と有色人種で都合のいいポリコレ的展開になるものの、ラストバトルが馬鹿馬鹿しすぎてメッセージ性が吹き飛ぶ。グレムリンの出番が思っていたより少ないが、低予算を割り切って強みを伸ばせている。

 

イコライザー

ジョン・ウィックみたいのかと思ってたらめちゃくちゃ真面目。殺人マシンものというには相手が積極的に襲ってくるので「舐められ」感はない。とにかくマッコールさんの精神性が格好いい。ホームセンターにあるものを武器にしてマフィアを殺すクライマックスのアクションも、「意外なものを武器に」的な可笑しさはなく、ひたすらに格好いい。法ではなく善性を自ら執行するマッコールは、正義の人ではあるものの、暴力でしか解決できない悲しさや、恐ろしさを感じさせる。ポジティブなメッセージも、マッコールさんが言うことで地に足がついて現実的に受け取れる。

 

イコライザー2

基本的なフォーマットは前作そのままだが、サブストーリーが本筋に合流しないので、構成の魅力は半減している。ラストのエピソードも取ってつけたようなハッピーエンドで微妙。観客にマッコールの正体が明かされているのでスリルはないし(シリーズものの宿命ではあるが)、敵の立ち位置も輪をかけてスリルとは程遠い。アクションのロケーションにも無理があり、プロ同士の対決なのでそこまで面白くもない。妻の話、「Who are you?」、そしてスーパーヒーローと、前作でやれなかったことを回収してくれたのはよかった。メインとなるゲストも、成功を暗示しかできなかった前作と異なり、実際の成功をビジュアルで見せてくれるのもよかった。前作とは違い、ただ面白いだけという感じ。

 

『アンフレンデッド』

一つのPC画面上でのみ描かれるホラー。発想こそ面白いし、設定を無理なく使って演出できているのもいいが、起こることは平凡な心霊ホラーでしかない。霊は出ずっぱりなので怖くないし、後半のヒトコワ的なパートの方が面白い。

 

『アンフレンデッド: ダークウェブ』

心霊ホラーだった前作とは異なり、サイコスリラーにジャンルが変わっている。ストーリーの繋がりもない。PC画面という設定でやりたいことを全て詰め込んでいて、どのアイデアも面白い。前作の不満点は全て解消されて、脚本も完璧にコントロールされている。絶望感も気持ちいい。「サスペンス」ではなく「ホラー」なのも最高で、大好き。

 

『ズーム/見えない参加者』

2020年、ロックダウン下のイギリスを舞台にしており、実際にコロナ禍にZoomを使って撮影されている。それを除けば設定はオーソドックスで、起こることも古典的ながら、逆に言えば最低限楽しめる。アンフレンデッドシリーズとは異なり、PC画面上で展開されるものの一つの画面ではなく複数人の画面を移動したり、恣意的にズームアップしたりして、アンフレンデッドより見やすいものの没入感は減っている。霊に襲われる後半は、主視点人物がその場にいないので、どうしても傍観的になってしまっている。撮影にも無理があるし、Zoomらしさ、コロナらしさも特にないが、歴史に残る未曾有の世界的パンデミックなのだし、ホラー映画というジャンルはこれくらいダイレクトに世相を切り取ったものを受け入れる土壌があるよな、と思った。

 

映画館3本(うち新作2本)、旧作17本。

 

 

観たかった映画

奇跡的になかったです。まさか、と思って調べたけど、やっぱりなかった。

 

 

読んだ本

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会[復刻版]』

庵野秀明がインタビュー・編集を行った1993年頒布の同人誌。当時あまりに語られることのなかった『逆シャア』を振り返ることで、『新世紀エヴァンゲリオン』を作る土台になったことが語られている。実際、読み進めていくといくつもの創作論が語られ、そこにはエヴァの骨子が見て取れる。

当時の空気感の捉え方も面白く、逆シャア紅の豚劇パト2王立宇宙軍といった作品たちがどう思われていたのかも興味深い。

総括されて逆シャアは「お葬式」であると結論付けられるが、その後の富野作品を見ていると納得できるもので、またVガン放送当時の冷ややかさも面白い。

同人誌ゆえに文体や質にばらつきがあるが、整った文章を書く人間は現在から見ると正しいことを言っていることが多くて、興味深かった。逆にオナニーめいた文章は、的外れであることが多かった。

最後に富野由悠季本人のインタビューが載っているのが、掟破りというか、ものすごい。どこまでが「富野由悠季」というペルソナからのリップサービスかは分からないが、富野の思想が好きなので、私が勝手に考えていたことの答え合わせのようで、嬉しかった。

エヴァが何のために作られたアニメだったのか知りたい人、当時のアニメ業界やオタクらしさを知りたい人、現在でも通用する創作論を学びたい人、そして富野由悠季が好きな人は、読んで損することはないので、3300円は怯むけどぜひ買ってほしいです。

 

 

日記

猫の友達

前に飼っていた猫は、外に出していた。20年以上前で、それが普通だった。5年前までは庭に、頻繁に他の家の猫が(あるいは野良か地域猫が)遊びにきていたが、今の猫を飼い始めた5年前から、ぱたりと来なくなった。まさかうちの猫と同じタイミングで全部が死んだわけでもあるまいし、つまりあれは、前の猫が他の家に行って、そのお返しとしてその家の猫が私の家に遊びに来ていたんだろう。友達がいなくなったから来なくなったということだ。一度だけ、庭で猫が周回をしているのを見たが、あれも曜日だとか猫だけに分かる符牒みたいなもので、持ち回りで誰かの家でやっていたんだろうな。

猫が窓を見ながらやたらと鳴いているので何かと思ったら、白い猫が家の前を通り過ぎていった。ぽてっとして少し汚い猫だった。別の日に見かけたのでついていくと、少しだけ距離をとりながら、あまり急いでない感じで逃げて、住宅街へと消えていった。

 

植えてない花が咲いた

去年までの二年くらいで、根気よく草むしりをして、花壇が綺麗になった。20年以上前に植えられた水仙の球根は一年では全て駆除できるものではなく、今年に入っても生えてきていた。去年はようやく種を植えて、花を咲かせることができた。何十年も手入れされず荒れ果て、花壇の外側にも雑草が生い茂り、三年ほど前まではそれが膝の高さまで伸び、大量の枯れ葉が敷き詰められ、いたるところに苔とイシクラゲが生え散らかしていた頃から考えると、泣けてくるほどだった。

毎日水をやって、剪定していた。夏頃に咲いて、一年草なので、冬になると全てが枯れていた。花壇を綺麗にしたからか……去年撒いた種が咲いたのか、元から(数十年前に)植えられていた種に栄養が行き渡って復活したのか、近所から運ばれてきたのか分からないが、何もしてないのに花壇の一角に花が咲いていた。それと同時に、そこに菓子の空き箱が捨てられていて、近隣の民度が計り知れた。犯人を見つけたら絶対に殺してやるからな。お前も、家族も、全員殺す。

お花、大好き! 今年はさらに勉強して、いろんな花を植えようと思います♪

 

来月観た映画