君は新進気鋭のアニメ映画放送枠「日曜アニメ劇場」を知っているか?

日本で最も有名な映画放送枠といえば「金曜ロードSHOW!」だろう。

二番目は「映画天国」か、「土曜プレミアム」か……。しかし、前者は関東ローカルの番組であり、後者は特番のための枠で、映画を定期放送するものではない。

金曜ロードSHOW!」にしても、放送されるアニメ映画は名探偵コナンジブリ細田守ルパン三世といった固定のメンツばかりだ。もはや誰もが見飽きている。

そんな中、大人も唸るようなラインナップを毎週放送する、アニメ映画放送枠がある。

それが「日曜アニメ劇場」だ。

 

日曜アニメ劇場は、BS12で毎週日曜19時から放送されている。

そもそも、BS12は日曜アニメ劇場を始める半年前まで、アニメ放送を“終了”していた。とはいえそれ以前も、『ブラック・ジャック』や『YAWARA!』といった古い……アニマックスのおこぼれみたいなものや、『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』のようなスカパーの遅れネットくらいしか放送しておらず、「他で事足りる」局でしかなかった。

その風向きが変わったのは、2020年7月のことだった。『雲のように風のように』のリマスター版が放送された。その三ヶ月後、「日曜アニメ劇場」の放送が始まる。

 

まずは、直近の放送ラインナップを見ていただきたい。

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2021年2月7日『パプリカ

2021年2月14日『メトロポリス

2021年2月21日『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0

2021年2月28日『王立宇宙軍 オネアミスの翼

 

ちょっとすごい。というか、勝てる。3週連続ヱヴァ(2021年1月15日)とか2週連続コナンTVSP(2020年9月11日)とか2週連続コナン映画(2020年4月10日)とかやってるときの金曜ロードSHOW!になら勝てる並びだ。

大人も子供も楽しめる~とか言ってジブリだの細田守だの新海誠だのに置きに行ってない、“攻め”のラインナップだ。BSとはいえ無料のチャンネルですることじゃない。アニマックスとか、何ならWOWOWでやっていてもおかしくない並びを、BS12でやっているというのがすごい。

たしかに、大友克洋の名前を出すなら『AKIRA』だろとか、攻殻GISなら2.0じゃない方だろとか言いたいことはあるけど、無料の放送局でこのインパクトを出せたのだから文句はない。

 

さすがに毎週これくらい強いラインナップを放送しているわけではないのだが、それでも「日曜アニメ劇場」特有の選出がある。公式サイトの他、Wikipediaにも過去の放送リストがあるので、見ていただきたい。

放送されるタイトルには、ある程度共通点が見受けられる。

 

有名な監督のマイナー作品

・『彼女と彼女の猫 -Everything Flows-』(『君の名は。新海誠

・『茄子 アンダルシアの夏』『茄子 スーツケースの渡り鳥』(『若おかみは小学生!高坂希太郎

・『マイマイ新子と千年の魔法』(『この世界の片隅に片渕須直

・『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』(監督ではなく制作会社だが、『鬼滅の刃ufotable

 

近年の単発のアニメ映画

・『劇場版 はいからさんが通る 前編』『後編』(2017、2018)

・『サカサマのパテマ』(2013)

・『ねらわれた学園』(2012)

 

深夜アニメの続編

・『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE

・『図書館戦争 革命のつばさ

・『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-

・『花咲くいろは HOME SWEET HOME

 

ファミリー向け映画、その他

・『銀河鉄道999

・『劇場版 どうぶつの森

・『雲のように風のように

・『劇場版MAJOR メジャー 友情の一球』

・『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(TVSP。後述の「アニメ26」に先駆けて放送)

・『ルパン三世VS名探偵コナン

 

二つ目の分類「近年の単発のアニメ映画」に顕著だが、全体的に、新しい作品をピックアップしているように見受けられる。

「有名な監督」というのも、併記したタイトルで分かるとおり、ここ数年でブレイク(一般に浸透)している。放映料の問題もあるだろうが(というかそちらの比重が大きいだろうが)、話題作はみんな観てるだろう、という意図もあるのではないか。

「深夜アニメの続編」は、とにかく、金曜ロードSHOW!では絶対に放送されないだろう。若者を取り込もうとする意欲が見られる。

ただ尖っているだけだと駄目だったのか、ルパコナなんかでバランスを取っていたりもする。

また、『茄子 スーツケースの渡り鳥』と『彼女と彼女の猫 -Everything Flows-』は映画ではなくOVAで、後者は30分の作品である。有料のCSチャンネル新海誠特集で自主制作の『ほしのこえ』を放送しないことを考えると、こちらの方が自由度が高い。

 

繰り返しになるが、「ファミリー向け」に分類した以外のタイトルは、どれも(比較的)新しい。

話題の監督の旧作であったり、公開年が新しかったり、若者向けのアニメを精力的に放送している。

半年間アニメを放送しておらず、それ以前も埃を被っていたアニメを放送していたチャンネルとは思えない大躍進だ。

今や『鬼滅の刃』がVODをきっかけに社会現象になるほどTVは力を失って久しいが、それでもTVの力は大きい。特に、子供はデバイスを自由に選べない。夕方に放送されるアニメは減り、ドラえもんですら時間を移動させられたが、まだ、子供はTVを見ている。

視聴率のことを考えれば、そうでなくとも少子高齢化で、どんなメディアも老人に向けたコンテンツに比重が傾いている。それで得られるものは何もない。子供に向けて商売すれば、10年後、20年後にその芽が開く。

オトナアニメ」なんて誰も言わなくなったほどに国民が総オタク化し、サブカルが市民権を得たけれど、しかし、いまだにアニメは子供が見るものである――そうでなければならない。子供に良質なアニメーションを見せることが、未来のアニメに繋がっていく。

 

金曜ロードSHOW!はバラエティの放送をやめ、ジブリらローテーションされていた作品群の頻度を抑え、視聴者リクエストとして『天使にラブ・ソングを…』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』三部作、『E.T.』、『プラダを着た悪魔』といった名作を放送した。

 映画放送枠としての本懐を思い出した金曜ロードSHOW!に、日曜アニメ劇場は立ち向かってほしいと思っている。

子供たちに(そして我々大人にも)アニメ映画を届けてもらえるよう、この放送枠を応援していきたい。

 

2020年3月にアニメの放送を終了したBS12は、以上のとおり、毎週アニメ映画を放送するようになった。

そして2021年1月から、シルバニアファミリーを放送するほか、「アニメ26」という放送枠が始まった。

ムヒョロジ二期(アニマックス)、刀剣乱舞花丸(U局)、こち亀TVSP、まじっく快斗、08小隊(OVA)と全てが再放送ではあるが、平日深夜に毎日アニメを放送している。

こちらは特筆すべきものはなく、「以前と同程度に戻った」くらいでしかないが、アニメ放送が再開したのは嬉しい限りである。

今後も「日曜アニメ劇場」とBS12から目が離せない――そうなることを願っている。

 

 

最後に、私の好きなアニメ映画を発表して終わりたいと思う。

 

第1位『Wake Up, Girls! 続・劇場版 後篇[Beyond the Bottom]』

第2位『この世界の片隅に

第3位『スパイダーマン: スパイダーバース』

第4位『きみと、波にのれたら』

第5位『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』